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韓国コスメから火が付き、すっかり日本でも定着してさまざまなコスメに配合されるようになった成分「CICA(シカ)」。どのような成分なのか、認知されつつありますね。
今回は、話題の成分「CICA」について、また関連する成分「TECA(テカ)」や「マデカッソシド」と、これらの成分の違いについてお伝えします。
※本記事は、2022年12月6日発行の日本化粧品検定協会 会員向けメルマガに掲載された記事を転載しています。
CICAについて

CICAは、伝統的なハーブである「ツボクサ」そのものやツボクサから抽出された成分を広く指す最近つくられた言葉です。ツボクサは、亜熱帯地域を中心にアジア圏で生息する野草であり、昔からアーユルヴェーダや漢方など民間療法で用いられてきました。「ケガをした野生のトラが、傷にツボクサを擦りつけて癒した」という伝承からタイガーハーブともよばれています。
つまりCICAとは、ツボクサ由来の化粧品原料全般を指す言葉で、特定の原料の名前ではありません。CICAというよび名についての由来は諸説ありますが、ツボクサの学名である「Centella Asiatica」の頭文字と末尾から、または瘢痕(傷あと)を意味する「cicatrix」が由来といわれています。
CICAの美容効果
多くの植物エキスの中には、未確認の有用な成分が複数含まれているのが一般的です。
ツボクサエキスの場合には、テルペン類とよばれる「マデカッソ酸(マデカシン酸)」、「アジア酸(アシアチン酸)」、その配糖体の「マデカッソシド」、「アシアチコシド」、その他ポリフェノール群などの有用成分が含まれていることがわかっています。
例えば、ツボクサエキスには元々創傷治癒の効果があったといわれているのは、「マデカッソ酸(マデカシン酸)」、「アジア酸(アシアチン酸)」のもつ抗酸化力や抗菌性、血管内皮細胞増殖因子の活性を整えることによる血管新生、「アシアチコシド」のもつ炎症の調整や真皮線維芽細胞活性化によるものとされています。
ただしひとくちにCICAといっても、ツボクサ由来の化粧品原料はさまざまな原料メーカーによるものがあり、使用するツボクサの部位、抽出法などの違いにより含まれる有用成分も異なるため、作用にも違いがあるのです。
CICAの有用成分のみを使った原料にも注目!

TECA(テカ)
Titrated Extract of Centella Asiatica(成分が定量されたツボクサエキス)の頭文字を取ってTECAとよばれている原料があります。古い文献ではフランス語読みでETCAと記載されています。
TECAはCICAの1つであり、もともと、フランスの医薬品の開発や販売を行っていた会社によって開発された原料です。ツボクサエキスに含まれる働きが確認された有用成分に着目。そのうちのマデカッソ酸(マデカシン酸)・アジア酸(アシアチン酸)・アシアチコシドという3つの有用成分のみが含まれています。
TECAはマダガスカル産のツボクサを使用して抽出・精製されています。
TECAに含まれる有用成分は、水に溶けにくい性質があります。そのため、水をベースにした化粧水には非常に配合しにくく、主に乳液やクリームなどの乳化された製品に使われます。化粧水に配合する場合は、リポソームに含ませた形で用いられます。
マデカッソシド、アシアチコシド
ツボクサエキスに含まれる有用成分のうち、マデカッソシドとアシアチコシドは、糖が結合された配糖体という成分です。
配糖体は水に溶けやすい性質をもつものが多く、中でもマデカッソシドは、水をベースにした化粧水などにも用いられます。
CICAやその有用成分に期待できる美容効果

抗炎症作用:肌荒れを防ぐ
アシアチコシドには、肌の炎症反応を引き起こす物質・インターロイキン(IL-1α)の産生を抑える抗炎症作用が確認されています。
マデカッソシドは、免疫機能を落とさずにプロスタグランジン(PGE2)などの炎症性サイトカインの産生と放出を減らすことによる抗炎症作用が確認されています。
多角的に炎症を抑えることで、肌荒れを防ぐことにつながります。
抗酸化作用:紫外線ダメージをケア
アジア酸(アシアチン酸)には、紫外線により発生したフリーラジカルから肌を守り、表皮、真皮の細胞の酸化を防ぐ作用が確認されています。
また、アシアチコシドには紫外線による炎症を抑制することで、紫外線ダメージを予防する効果が期待できます。
ダメージ修復:肌のハリをケア
アシアチコシドには、真皮線維芽細胞を活性化する作用が確認されています。それにより、コラーゲンやヒアルロン酸などの産生を促進し、肌のハリをケアする効果が期待できます。
また、炎症により発生するコラーゲン分解酵素を抑制することも確認されています。
抗菌作用:肌をすこやかに保つ
マデカッソ酸(マデカシン酸)・アジア酸(アシアチン酸)には、ブドウ球菌などのグラム陽性菌やアクネ菌、デリケートゾーンなどにも観察される淋菌(りんきん)やカンジタへの抑制作用が確認されています。
抗糖化作用:肌にツヤを与える
糖化とは、体内の糖分がタンパク質と結合しAGEs(最終糖化生成物)が生成される現象です。AGEsは肌の老化を促進させ、くすみやシワ、たるみを引き起こします。
マデカッソ酸(マデカシン酸)・アジア酸(アシアチン酸)には、AGEsによる細胞ダメージを抑制する作用が確認されています。さらにTECAには、糖化やカルボニル化によるタンパク質の黄色化を防ぐ働きも確認されており、肌の黄ぐすみを抑える効果も期待できます。
赤ら顔を抑える:肌を整える
何らかの刺激によって毛細血管が過剰につくられると赤ら顔になりやすくなります。アジア酸(アシアチン酸)は、血管内皮細胞増殖因子の活性をバランスよく調整することで、赤ら顔を抑える作用が確認されています。また、マデカッソシドは炎症を抑えることで、赤ら顔を防ぐ作用が確認されています。
バリア機能の強化:うるおいを守る
マデカッソシド・アシアチコシドには、角層のセラミドの足場であるコーニファイドエンベロープ(CE)を強化する作用、および肌のNMFの元となるフィラグリンや、セラミドを増やす作用が確認されています。それによって角層の保湿力が高まることが期待できます。

監修:竹岡篤史先生
国立研究所にてペプチドを用いた皮膚塗布型ワクチンの開発を経て、原料会社にて2002年よりスキンケア成分開発に従事。国内海外を飛び回りスキンケアの成分の探索と開発、皮膚への効能研究が専門。在籍企業における研究で開発した成分が、2016年には「InCosmetics」にてイノベーションアワード金賞を世界で初めてアジアから受賞。2020年にも開発した肌バリア再生オイルが保湿部門で金賞を受賞。マダガスカルへも訪問し、ツボクサ由来成分の機能性は初期より継続的に研究を続けている。
-参考文献-
Roche Nicolas Laboratory, Bayer Healthcare, Seppic社 技術者資料(竹岡氏より提供)